山野草研究家 久志氏のチベタヌス探訪
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中国甘粛省のヘレボルス・チベタヌス | |
近年、クリスマスローズ チベタヌスの人気と相まってかなりのチベタヌスが輸入されております。 その中にあって情報も混乱しているかと思われます。 ガーデナーにとって正しい情報が一つでも多く知り得たいと思う気持ちは誰しも思うところです。 今回日頃お世話になっております久志氏に特別寄稿を頂きましてご紹介させていただきますと共に、 皆様のお役に立ててればと思う次第です。 |
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2007年、2008年の春、2年続けて中国陝西省の西安を基に秦嶺山脈の何箇所かの山地や特に甘粛省天水郊外のクリスマスローズの自生地を旅しました。秦嶺山脈は中国中部を東西に連なる山脈で東は河南省西部から陝西省を貫き、西の甘粛省西部に及ぶ山脈。ジャイアントパンダの生息地としても有名で、平均標高が2000m~3000m程度、最高峰は富士山より9m低い.3,767mの太白山です。
今回は甘粛省天水郊外に自生するクリスマスローズの原種の一種、ヘレボルス・チベタヌスの自生地の様子とその周辺で見かけた開花植物を紹介します。 このH. チベタヌスの最初の外国人の発見者は、19世紀に四川省西部に入ったフランス人宣教師アルマン・ダヴィッド神父で、四川省の宝興(バウシン)で発見しました。その後、幻の植物となり、約120年後に日本の荻巣樹徳氏が1989年に同地で再発見されたお話は余りにも有名です。 H. チベタヌス(H.thibetanus)は四川省西部の他に長江と黄河の分水嶺である秦嶺山脈にも自生することが知られ、数年前にドイツ人のグループが学術交流の名目で秦嶺山脈に入られたようですが、現地の調査施設に植栽された自生種を見ただけで現地には案内してもらえなかったと聞きます。そんな意味で私達が現地の大学の先生にご案内いただいた天水郊外の自生地は海外からの見学者としては最初だったようです。2007年は4月下旬に訪ね、この時は花の最盛期が既に過ぎていましたので、2008年は20日程早い4月初旬に訪ねて花の最盛期に出会えました。自生地は秦嶺山脈西部の北側で標高が約1700m小さな渓谷の両側の斜面に群生していました。この他にも近隣の麦積山石窟近くの避暑地では散歩道に沿って植栽されていたのには驚きました。多分この周辺にも自生があるものと思われます。また、秦嶺山脈の南側の植物観察のために天水から徽県方面に通じる道路を走行中に車窓から林床に一面の自生を発見しました。 時間の関係で自生地の中まで踏み込んでいませんが、林床の奥まで自生している様子でした。 また、周辺で見かけた開花植物は木本では日本でも庭木に広く栽培されているレンギョウが一面に自生して山が黄色に見える程でした。また、日本にも自生しているチョウジガマズミに似た甘粛ガマズミ(Viburnum kansuense)と思われる種が綺麗に咲いていました。草本ではキクザキイチゲに近縁のアネモネ・アルタイカ(Anemone altaica)、白い大きな花のフクジュソウ(Adonis davidii)が目を引きました。また、岸壁に咲く、常緑で小形のイカリソウで葉上開花のエピメディウム・ブレビコルヌ(Epimedium brevicornu)も気になる植物でした。この他にもエンゴサクの仲間やスミレの仲間が散見されました。 (参考文献 : 秦?植物誌、中国高等植物図鑑他) |
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